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Sucker:小松千倫
2023.07.07.Fri
07.30.Sun
キュレーション 髙木遊
アーティスト 小松千倫
開場時間 13:00 - 20:00 (※7月7日のみ19:00 - 20:00) 再生時間 開場時間中、毎時00分より1時間再生、19:00が最終回 閉場日 月、火、水 入場料 ¥500 アーティスト 小松千倫 声 小松 千倫、敷地 理 、下村 ひとみ、人工音声たち、早川 葉南子 デザイン 原田光 施工 柏木崇吾 キュレーション 髙木遊 主催 The 5th Floor 賛助 D/C/F/A
小松千倫は、見えていなかった、聞こえていなかったもの、忘れていたものを慈しみ、それらを嫌味なく、そして説教臭くなく、現前させてきた表現者だ。「作品」あるいは「展覧会」の規定する鑑賞体験は、時間的体験と空間的体験のパラメーターを揺れ動きつつも、その多くが空間的体験を基盤にしている。本展『Sucker』にて、小松千倫は、それらを時間的体験の極端へと振り切ろうとする。これは、彼の表現者としての絶妙な立ち位置を、いや、立ち位置ではない。彼の表現者としての運動を、「美術家」、「音楽家」、「DJ」あるいは「研究者」をケンケンパしてきた動向を示している。本展は、現実世界に起こる現象を捉え、切り取り、顕示せんとする潮流への逆行である。 本展タイトル『Sucker』は、「吸う、吸引する」を意味する「Suck」に、「する人」の意をもつ「er」が付加される。辞書通りならば「カモ、だまされやすくて、利用しやすい人」。しかし、小松的には、ストローの穴を通じてシェイクを吸い出すように、穴の向こう側から何かを吸い出す人、その行為と構造、そして吸い出されてくる何かを「Sucker」と定義する。そう、『Sucker』が穴を通じて吸い出すのはシェイクなどではなく、はるか遠く、現在では想像できないような苛烈な過去の声だ。 植民地時代の南洋で言語研究を行った海軍将校の松岡静雄。 関東大震災直後の喧騒の中で憲兵に殺害されたアナキストたち、伊藤野枝と大杉栄。 アナキストたち殺害の罪を被り、服役し、のちに満州国建国において暗躍した甘粕正彦。 詩に現実性と平易性を求め、発声を重視した民衆派の白鳥省吾。 占領下の中国で膨大な量のアヘンの取引に関与した里見甫。 三原山火口に身を投げた学生たち。 そして100年前の日本に存在したであろう声々。 『Sucker』では、空間の壁自体が音響装置となり、1時間のサウンドが1日に7回再生される。そのサウンドは会期中全ての日程ごとに異なる。その内容は、掩体(えんたい)、アヘン吸煙器具、井戸、胞衣穴(えなあな)、三原山火口といった筒/穴の形象について、そして、その穴の周囲に集う声たちだ。本展は、「声」と隣り合わせの主体性、不朽性を問いかけながら、「展覧会」という肥大化した視覚空間に対して、声を吸い出し、逆流させるのだ。 髙木遊
髙木遊 1994年京都生まれ。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了、ラリュス賞受賞。キュレイトリアル・スペースであるThe 5th Floor キュレーターおよび金沢21世紀美術館 アシスタント・キュレーター。ホワイトキューブにとらわれない場での実践を通して、共感の場としての展覧会のあり方を模索している。主な企画展覧会として「生きられた庭 / Le Jardin Convivial」(京都, 2019)、「二羽のウサギ / Between two stools」(東京, 2020)、「Standing Ovation / 四肢の向かう先」(静岡, 2021)、「アペルト17 SCAN THE WORLD 」(金沢, 2022)
小松 千倫 1992年高知県生まれ、京都市在住。音楽家、美術家、DJ。2022年、京都市立芸術大学大学院博士後期課程メディア・アート専攻修了。これまでに、angoisse (バルセロナ)、BUS editions (ロンドン)、flau (東京)、Manila Institute (ニューヨーク)、psalmus diuersae (サンフランシスコ)、REST NOW! (ミラノ)等、様々なレーベルより複数の名義で膨大な数の音源をリリースしている。また情報環境下における情報とそれに隣した身体の関係、その記憶や伝承の方法について光や歌を用いて制作・研究する。