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Mimicry of Hollows 虚擬態
2021.06.11.Fri
07.04.Sun
キュレーション ヴィンセント・ライタス & 黒沢聖覇
アーティスト タニヤ・エンゲルベルツ, ナイル・ケティング, 松田将英, ヴィンセント・ライタス&レイ・LC, フローリス・ショーンフェルド, アンヌ・ドゥ・ヴリース
共催 The 5th Floor, 花園アレイ デザイン 八木幣二郎 助成 駐日オランダ王国大使館: 東京藝大「I LOVE YOU」プロジェクト 協力 ディメンコ社, コーンズ テクノロジー株式会社, ANOMALY コラボ展 「Art Machines 2: International Symposium on Machine Learning and Art 2021」(シンギング・ウェイブス・ギャラリー、香港城市大学、香港) お問い合わせ 黒沢聖覇: seiha1991@gmail.com ヴィンセント・ライタス: vincentruijters@gmail.com 本企画展およびThe 5th Floorについてはソフィー・アルニまで ソフィー・アルニ: sophie.arni@globalartdaily.com
近年、アルゴリズムやAIの急速な発達によって、SNSや市場原理などを通して私たちの社会は認知レベルで急速に変化しながら、利益を無意識のうちに最大化するように操作されています。私たちにとってのブラックボックス、奥が見えない窪み(Hollow)のどこかでうごめくAIのような存在は、しばしば擬人化することで、私たちの行動や社会システムに大きく影響を与えているのです。それにともなって、わたしたちをとりまく自然の地形や風景も、人間の介入によって窪んだり、盛り上がったりと、ますます変容しています。 そして、2020年の始まりとともに生じたコロナ渦が、私たちが認識可能な世界の背後で進行していた事態を決定的に前景化させたことは、もはや言うまでもありません。今日、私たちの生きる世界と「虚 (Hollow)」の世界という「図と地」の関係は、ときに反転し、ときに侵食し合うことで、それぞれの境界を認識することが難しくなっています。 本展はこうした状況のなか、AIのシステムや自然の風景の中にある実体の分からない「虚の領域」に「擬態化」することで、この境界の不明瞭な世界をとらえようとする可能性を考えます。地球規模で様々な「虚の領域」が前景化してきている現代において、私たちはこれを自分たちと切り離すことなく、どのように向き合い、そこからなにを見出せるのか、主にオランダ人と日本人のアーティストによる実践から紐解いていきます。
ヴィンセント・ライタス 1988年、オランダ、デン・ハーグ生まれ。東京在住。 ライタスはユトレヒト美術大学大学院修士課程デジタル文化デ ザイン専攻修了。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻博士課程修了。主に人間の感情と、人間関係とに焦点を当て、人間性とは何かという問題を考察するため、現代のシステムが持つ過剰な刺激やスピード、冷たさに着目し、フィジカルコンピューティングから、水彩画に至る様々な技法において制作を行う。「呼吸する内/外 」[英:Breathing IN/EX-terior](駒込倉庫 Komagome SOKO、東京)。2020年には「ハイリスク / ノーリターンズ- 南米現代美術のゲリラ戦術」(青山目黒ギャラリー、東京)キュレーターとして活動。2018年にはアートフェア東京2018「World Art Tokyo: PANGAEA TECTONICS」エキシビション・デザイナーとして活動。「日本政府(文部科学省)奨学金」受賞。オランダ「プリンスベルンハルトカルチャー ファンド賞」受賞。ウェブサイト: http://www.vincentruijters.com 黒沢聖覇(くろさわ・せいは) 1991年生まれ。東京在住。2019年東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了。同研究科博士後期課程在籍。タイランド・ビエンナーレ2021 コ・キュレーター。キュラトリアル実践を通して、自然環境・社会・精神の領域を横断する近年の新しいエコロジー観と現代美術の関係性を研究。展覧会制作に留まらず、他のアーティストと協働して作品制作も行う。 主な展覧会:「冷たき熱帯、熱き流氷」(トーキョーアーツアンドスペース本郷、東京、2021)、「欲望:20世紀の初めからデジタル時代にいたるまでのアートと欲望のあり方の変遷」(アイルランド国立現代美術館、ダブリン、アイルランド、2019)、「深みへ‐日本の美意識を求めて‐」(ロスチャイルド館、パリ、2018)、World Art Tokyo「パンゲア・テクトニクス -地殻変動するアート ⇆ ものがたりの分岐点-」(東京国際フォーラム、2018)、第7回モスクワ国際現代美術ビエンナーレ「Clouds ⇆ Forests」(国立トレチャコフ美術館新館、モスクワ、2017)。平成29年度東京藝術大学平山郁夫文化芸術賞、受賞。 http://www.seihakurosawa.com
タニヤ・エンゲルベルツ エンゲルベルツ は、ロマンティックな風景と現代社会に おける経済的現実の二面的な関係をリサーチしていま す。最近のプロジェクトでは、かつては繁栄の源であっ た風景が大きく変化する過程に迫っており、 その背景 には、資源の枯渇や、経済的に立ち行かなくなったプロ ジェクトの放棄があります。エンゲルベルツは、カメラを 持ってこれらの風景の中を移動し、業界や中央政府の 関係者と出会いながら、こうした場所の雰囲気や経験 を捉えようと、映像やテキストを制作しています。 本展出品作はまさに「Hollow」と題されています。本作 は、有害物質を含むオランダの水域からの汚泥の投棄 場についての映像作品及びテキストで、物理的な「空 洞」と自然の景観に対する人為的な介入の美的・概念 的な関係を示しています。 ナイル・ケティング ケティングは、パーフォマンスやサウンド、ビデオなど、 様々なメディアを取り入れたインスタレーション作品や セノグラフィで知られています。 テクノロジーの進歩に 伴う時間や空間における、物質–非物質、生物–無生物 の境界に新たな洞察を加えています。 本展では、作家がモチーフとして扱う70年代を代表するラディカルパンク音楽を学習させ再生成と、再ミックス された進行中のサウンドプロジェクトや、マイクスタンド やピエゾ素子などのレディーメイドのデバイスなどを組み合わせられた彫刻作品を組み合わせ、実験的なスペースを生み出します。 本作は無機的な機械の持つ生命感やスリークさを通し て、強力な規則やシステムによって包括され管理されてしまう人間-モノの関係を規範から逸脱させます。機械(モノ)が人間環境の中へ、人間がモノ同士の環境の中へと相互に擬態し、両者の境界を多面的にずらしていくことで、今日の環境を破壊することなくシステムからゆるやかに脱線するためのオーガニック・パンク-ラディカリズムが本作によって示されています。 松田将英 匿名のアーティストとして活動を開始した松田は、匿名性と集合知を主題としたTwitter上の BOTアカウントを介して 人々と協働するイベントやインストラクション、パフォーマンスによって大きな注目を集めました。その活動はソーシャル メディア以降の主体や作者性を問い直すものであり、直接的に都市や社会に介入することで新たな共同性を作り出す実践として高い評価を受けました。 2019年には実名での活動を開始し、国内外のホワイトキューブも発表の場所に含まれるようになった彼は、ネットワークが浸透して以降のセレブリティやエコノミー、景観に対するコンセプチュアルで詩的な実践によって、人々の認識をアップデートする試みを行なっています。 本展において彼は、展覧会コンセプトにメタレベルで応えます。The 5th Floorのバルコニーを活性化し、会場の風景に 擬態するサイトスペシフィックなインスタレーションを生み出すことで、展示空間や展示作品、鑑賞者とコンセプチュアルに対話します。 ヴィンセント・ライタス & レイ・LC ライタスの中心的なテーマである「Intimacy as Aesthetics(美 学としての親密さ)」を実現するため、自分の内側にある感情的な空間を物質的な空間として建築的にモデル化することに 挑戦しています。 レイ・LCは、神経科学研究の知識を、人間社会や人間と機械の間の絆の構築のために活用します。彼の学際的で共同専門的なアプローチは、メディアアート、スペースデザイン、 ヒューマン・コンピューター・インタラクションの合流点を探り、 社会的利益を生み出すイノベーションを探求しています。 本展では、二人のコラボレーションによるバーチャルペット作品「ちきゅうっち」を制作・展示します。本作は人間の活動によって衰退し続けている自然環境の特定の地域を擬人化したものです。本プロジェクトのプロトタイプとして、アマゾンの熱帯雨林をモチーフにした「あまぞんっち」が制作されています。アマゾンの面積の状況がAPI技術と同期し、アマゾンに関するツイートを機械学習AIで解析されます。 「ちきゅうっち」の健康状態と、現実の自然の地域の衰退の実態がシンクロしており、わたしたちの自然環境に起こる問題が、身近な存在として擬人化されることで、親密さと環境危機の体験の双方を生み出します。 ライタス やレイLCの世代が育ってきた消費文化やポップカルチャー文化は「自然環境」との感性的な結びつきを遠のけてきました。本作はそうした状況に半ば戦略的に言及し、自然と現代環境との結びつきの可能性を再考します。 フローリス・ショーンフェルド 国内初展示となるショーンフェルドは、フィクションと信仰の関係に焦点を当てて活動しており、近年は「PUK*」と名付けられた新しい人工知能の開発を中心とした、複数のステージからなるプロジェクトを進めています。このプロジェクトでは、人工知能と人間の知能の両方における規範の概念に疑問を投げかけています。人間と人工システムの両方において、知的な行動を構成するものは何かを疑問視し、それに続いて「代替的な知性」の可能なシステムを提示しま す。 本展では、彼のプロジェクトである「PUK* BREAKDOWN」の一部を紹介します。これは、様々な地域のフクロウの工芸品を自動生成したAIアニメーションです。このプロジェクトでは、知能の定義やそのオルタナティブな可能性など、知能の意味そのものを問うことを目的としています。現実に対する論理的なアプローチが著しく異なる、わたしたち人間とは精神的にも乖離した様々なものを含む知的システムのアイデアについて議論を深める機会を与えています。 アンヌ・ドゥ・ヴリース 国内初展示となるドゥ・ヴリースは、写真、デ ジタルメディア、絵画、インスタレーションアー ト、彫刻、パフォーマンス、ビデオアートなど、 幅広いメディアを用いて活動するアーティストです。2009年には、写真を使った型破りな彫刻作品で知られるようになります。 本展に出品されている映像作品『Critical Mass: Pure Immanence』(2015年)は、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの最後のエッセイ「内在-ひとつの生」(1995年)に着想を得て、第9回ベルリン・ビエンナーレのために制作された作品です。本作ではハードスタイル・エレクトロニック・ミュージックの形式と制限の中で、人間の主体性の限界とテクノロジーと大衆体験の関係を探求しています。エレクトロニック・ダンス・ミュージックの中で繰り返されている、社会の分断を超えた意識の変化や統一を求める感情と共鳴しながら、音楽フェスティバルの文化における大衆の持つ身体性と批評性をメタレベルで往来することで、現実と虚構の境界の不明瞭さを提示しています。