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ラマヴァニア:影の主君
2024.07.03.Wed
08.04.Sun
キュレーション ポンサコーン・ヤナニソーン
アーティスト アノン・チャイサンスック、永田康祐、ナーナット・タナポーンラピー、ティーラパット・ウォンパイサンキット、佐藤朋子
開場時間 13:00 - 20:00 閉場日 火、水、木 * 初日の7月3日のみ水曜オープン アクセス 東京都メトロ 千代田線 根津駅 2番出口 徒歩4分 入場料 ¥500(学生無料) 主催 The 5th Floor 共催 Speedy Grandma 協賛 DDD HOTEL(レジデンス)、Hotel Graphy 根津(レジデンス)、サクダ・チャンタナワニ(展覧会) The 5th Floor 賛助 D/C/F/A 協力 プラパモントン・イアムチャン、岩田智哉、菊池冬輝、宮澤佳奈、矢澤あねら、ナウィン・ヌートン、ジャスティーナ・スワンウィホック、チャリラ・チューサック、ウォラシット・プッタラク、ウォラナット・ウォラピタック、プティパット・タムタンティワッタナー、パスートゥ・サ=イントン、パンサン・クロンディー、スティポン・スッドゥサン グラフィック・デザイン リタ・チャラ=アディサイ 設営 柏木崇吾 お問い合わせ The 5th Floor / info@the5thfloor.org 【関連展示】 本展「ラマヴァニア:影の主君」の関連展示として、The 5th Floorから徒歩1分のHotel Graphy 根津を会場に、同展に関連するポスターの展示を開催いたします。 本展と合わせてぜひご覧ください。 会期 2024年7月3日(水) - 8月4日(日) 会場 Hotel Graphy 根津 〒110-0008 東京都台東区池之端4-5-10 開場時間 13:00 - 20:00 閉場日 なし 入場料 無料
一般的に、吸血鬼の姿は鏡に映らないと信じられている。魂がないためだという説もあるが、より興味深い一説によると、当時の鏡は研磨された銀で作られており、銀が悪を退ける聖なる物質であるためだと言われている。もしかすると、吸血鬼がフィルムに映る理由はそれかもしれない。吸血鬼が時間ベースのメディウムであり、むしろ時間そのものに抵抗する存在であると考えるのはなんと皮肉なことだろうか。彼らはしばしば見知らぬ他者として存在する。私たちと似たような外見を持ち、私たちと同じように考えるが、それでもやはり異なる存在である。しかし、吸血鬼は許されなければ、招かれなければ入ることができないということを忘れてはならない。 ある亡霊が私たちに憑いてまわる――植民地主義の亡霊である。世界中のあらゆる土地は、直接的に植民地化されたかどうかに関わらずこの亡霊に取り憑かれており、タイや日本も同様である。そうした時代は遠い過去のものだと考える人もいれば、いまだ私たちはその最中にいると考える人もいるが、亡霊が依然として存在することは否定できないだろう。それは自らの輪郭をぼやかすように進化したが、どれほどその姿を変えようとも、依然として暗闇の中で作動し続けている。かつて死んだと考えられていた統治の形態は、単に時代に合わせて適応し、残酷な迫害から寄生的な搾取まで、かつて明らかであった神話的な暴力が世俗的な姿へと外見を変えたに過ぎない。 (ブラム・ストーカーやジョン・ウィリアム・ポリドリによる)近代の吸血鬼は、国家の中央集権化と産業化による新しい搾取労働の概念に対する不安が具現化したものとして、近代初期(1800年代)に一般的な概念として登場した。獲物はもはや死ぬことなく、空っぽになるまで吸い尽くされ、近代性を提唱する一方で貴族的性格がブルジョワへと引き継がれ保持された体制による、持続的かつ継続的な暴力である。吸血鬼は常に保守的な力であり、変化に抵抗し、自らの歴史とそれを変えた者たちに対して誇りを持つ。永遠の命を執拗に求め、時間の無情な進行を拒絶することで、彼らは単なる不死の表象のカタチとなるのである。 「ラマヴァニア:影の主君」は、植民地主義および産業化の時代のアジアの歴史における地政学的力学を通じて、そのような存在へと迫る試みである。タイおよび日本による西洋の勢力に対抗する近代化の試みは、互いに並行している。両国とも技術的な進歩だけでなく、自国の超自然的存在、神々や吸血鬼との関係を再構築することによって、国家の統合を図った。自らの帝国主義的な転換、自身による植民地化、そして国家の再定義と引き換えに独立は達成され、その結果、個人が神となり、ある人々は不死となったのだ。 * 本展は、第2回目となるThe 5th Floorのキュレーター・イン・レジデンスの成果展として開催されます。
ポンサコーン・ヤナニソーン|Pongsakorn Yananissorn ポンサコーン・ヤナニソーン(バンコク、1994年生まれ)は、共有されたフィクションを用い、また忘れられた過去と来るべき未来の間に線を引くことで、異なる生および共同作業のあり方を引き起こし、創造するような活動を展開するアーティスト/インディペンデント・キュレーター。彼のキュレーションに、「Crypto for Cryptids」(2021年、JWDアートスペース、バンコク)、「Talk-Talk Vilion Pavilion」(2021年、バンコク・ビエンナーレ、バンコク)、および「PostScripts」(2018年、バンコクビエンナーレ、バンコク)などのプロジェクトが挙げられる。また、Ghost 2565(2022年)のアシスタント・キュレーターおよびエデュケーショナル・プログラム・ディレクターなどを務める。また、「Plaza Projects」(2016年、バンクーバー)の共同創設者であり、「Speedy Grandma Gallery」(2020年、バンコク)の新体制を組織。現在は、Charoen Contemporaries(2018年、バンコク)およびThis Useful Time Machine(2020年)のコレクティブのメンバーとしても活動を行う。現在、タイのバンコクを拠点に活動。
アノン・チャイサンスック|Anon Chaisansook アノン・チャイサンスック(バンコク、タイ、1992年生まれ)は、政治的状況や社会構造への関心を持つ。彼の実践は、しばしばオブジェ、イメージ、サウンドの物理的な変容を伴う。コーディング、音響制作、3Dビジュアル、3Dプリントなどの手法を駆使し、物質を歪め、オブジェに付随する既存の物語をねじ曲げ、溶解させることで、現代における主流の階級にまつわる言説に対抗する。 主な参加に、「There is no better place」(バンコク世界映画祭、2022年)や、NON-NATIVE NATIVEコレクティブの一員として、オランダ・アイントホーフェンで開催された第3回MAJHI INTERNATIONAL ART RESIDENCYが挙げられる。 永田康祐|Kousuke Nagata 1990年愛知県生まれ、神奈川県を拠点に活動。自己と他者、自然と文化、身体と環境といった近代的な思考を支える二項対立、またそこに潜む曖昧さに関心をもち、写真や映像、インスタレーションなどを制作している。近年は、食文化におけるナショナル・アイデンティティの形成や、食事作法における身体技法や権力関係、食料生産における動植物の生の管理といった問題についてビデオエッセイやコース料理形式のパフォーマンスを発表している。主な個展に「イート」(gallery αM、東京、2020)、グループ展に「見るは触れる 日本の新進作家 vol. 19」(東京都写真美術館、2022)、あいちトリエンナーレ(愛知県美術館、2019)など。 ナーナット・タナポーンラピー|Nanut Thanapornrapee ナーナット・タナポーンラピー(バンコク、タイ、1995年生まれ)は、バンコクを拠点に活動する学際的なアーティストであり、実験映画、ビデオゲーム、AI、VJ、DJを用いて、メタ・ナラティブやオルタナティヴな歴史を探求する。2021年、Prince Claus Fundのシード賞を受賞し、Documenta 2022のモバイルラボに参加。 過去の展示に、「A Real Engine: 18th Digital Art Festival Taipei 2023」(台北国立科学教育センター、2023年)、「A Kind of Alchemy': The Work of Art in the Age of Artificial Intelligence」(バーチャル展示、DAHJ Gallery、ミュンヘン、2023年)など。過去の上映に、「12th Kyiv International Short Film Festival: Neither Artificial Nor Intelligent」(ウクライナ)、「Milan Machinima」(Museum of Interactive Cinema Milan、イタリア、ミラン)など。 ティーラパット・ウォンパイサンキット|Theerapat Wongpaisarnkit ビーム・ウォンとしても知られるティーラパット・ウォンパイサンキット、(バンコク、タイ、1992年生まれ)は、バンコクを拠点に活動するアーティスト。彼の作品は、映画、音楽、インスタレーション、ライブDJパフォーマンスなど、さまざまなメディアにわたり、そのほとんどが実験的なアプローチを取る。彼の作品はしばしば、感情の抽象化や都市生活における孤独を、ローファイ/サイファイ的な美学で表現する。2020年以降、COVID-19のパンデミックとタイの政治的な大変動を受けて、彼は地政学的、心理的、精神的な視点から国家というアイデアの探求に取り組む。また、フルタイムでコマーシャルの映像編集およびディレクターとして働いており、アートについて語る週刊ポッドキャスト番組「Arttrovert」の共同ホストも務める。 佐藤朋子|Tomoko Sato 1990年長野県生まれ。2018年東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。レクチャーの形式を用いた「語り」の芸術実践を行っている。日本が辿ったいびつな近代化への道のりや、大文字の歴史からこぼれ落ちてしまった出来事が物語る歴史の複数性への関心と、各地に残る伝説や遺跡などへの興味からリサーチを行い、調査過程から浮かび上がる事柄を複眼的につなぎ合わせてフィクションとドキュメントを行き来する物語を構築する。近年の活動に、オンライン・プロジェクト《TWO PRIVATE ROOMS-往復朗読》(青柳菜摘と共同、2020年〜)、「第14回恵比寿映像祭:スペクタクル後 AFTER THE SPECTACLE」(東京都写真美術館、2021年)出品、「公開制作vol.2 佐藤朋子 狐・鶴・馬」(長野県立美術館、2022)など。また、シアターコモンズにて東京をフィールドに展開するプロジェクト《オバケ東京のためのインデックス》(2021年〜)に取り組んでいる。